経理事務に対して「会社のお金を扱う仕事」というイメージはできても、実際の仕事内容は詳しくは知らないという方も多いかもしれません。経理事務は経営的な観点から会社を支える、会社にとってなくてはならない職種です。この記事では経理事務の仕事内容やほかの事務職との違いに触れながら、必要なスキルや向いている人の特徴、転職成功のポイントなどを解説します。あわせて、経理事務の転職におすすめの転職サイトも紹介しましょう。
経理事務とはどんな職種なのでしょうか。仕事内容やほかの事務職との違いについて解説します。
経理事務はどんな業界・企業でも不可欠の職種です。それは経理事務が会社のお金を扱う職種であり、経理機能がない企業というのは存在しないからです。会社を経営的な観点から支える、縁の下の力持ち的な存在だといえるでしょう。
経理事務の仕事内容は定型業務と非定型業務があり、定型業務は「日次」「月次」「年次」の業務に分かれます。定型業務は日次業務の積み重ねが月次業務につながり、月次業務の積み重ねが年次業務につながるというのが基本的な流れです。以下で経理事務の代表的な定型業務を確認しましょう。
日次業務は以下のような業務があります。経理事務としての経験が浅いスタッフクラスの人員は、まずは日次業務を正しく行えるように取り組むことになります。
月次業務は以下のような業務です。日次業務を一通りできるようになると、月次業務も任されるようになります。
年次業務は以下のような業務です。年次業務は専門性が高い業務が多いため、経理事務としてある程度の経験を積んだ人が任されます。ただし経験が浅い場合でも年次業務のサポートをするなどして徐々に業務を覚えていくことができます。
「経理」も「経理事務」も同じ職種のことを指します。ただ、中には業務内容によって「経理」と「経理事務」を呼び分ける人もいるようです。たとえば年次決算や折衝業務を行う人を経理と呼び、伝票作成や仕訳入力など単純作業を行う人を経理事務と呼ぶようなケースです。もっとも、単なる呼び方の違いであって、明確なルールは特にありません。
経理事務も事務職のひとつですが、経理分野の事務業務を行う点で違いがあります。たとえば一般事務は電話や来客応対、備品管理やデータ入力などの事務作業を行いますが、会社のお金に関する事務を行うことは基本的にありません。また営業事務は営業職を事務の面からサポートするために、顧客からの問い合わせ対応やプレゼン資料の作成などを行います。営業事務も会社のお金に関する事務にはタッチしません。 このように経理事務とほかの事務職との大きな違いは、会社のお金に関する事務処理を行うかどうかという点に集約されます。
もっとも、経理事務も事務職である以上、電話や来客応対など一般事務が行う業務を担うこともあります。また経理事務が社会保険の手続きや行政への申請書類の作成、健康診断の日程調整や準備など、一般的に総務部が担当するような業務を行う場合もあります。経理事務にどこまでの業務を担当させるのかは企業や部署の方針によって異なります。 企業規模による違いもあります。一般に規模が大きい企業は業務が分担されているため経理事務は経理まわりの業務のみを担当するケースが多いでしょう。また複雑な仕訳や連結決算など規模が大きい企業ならではの高度な業務も発生します。一方、中小規模の企業であれば経理事務に限定されず一般事務や総務が担当する業務まで幅広く行うケースが多く見られます。高度・複雑な業務は少ないですが、多様な業務経験を積めて経理業務の全体像も把握できます。 ここまで経理事務とほかの事務職の違いを紹介しましたが、実際のところ「○○事務」というのは単なる名称にすぎません。転職活動をする際には、求人票に書かれた名称だけにとらわれずに「実際の業務内容は何か」を確認するようにしましょう。
経理事務としてスキルアップに努めたい、これから経理事務に挑戦したいという方に向けて、必要なスキル・知識を説明します。
経理事務は事務職なので、事務処理能力が求められます。小さな数字のミスも許されないため、正確性が必要です。また、月末処理や決算など期日が決まっている業務も多いためスピードも求められます。 経理事務ではExcelを使ったデータ管理やWordを使った文書作成を行う機会もありますが、会計ソフトや給与計算ソフトなど会社が独自に導入しているソフトを使うことが多いです。簡単に操作できるソフトが多いので高度なパソコンスキルなどは必要なく、一般的なパソコンスキルがあれば十分に対応できます。
経理事務の共通言語といえば簿記です。仕訳入力などの日常業務ですら簿記の考え方を活用するので、簿記の知識は必須です。スタッフクラスの経理事務に必要なレベルとしては日商簿記検定3級程度があれば、日常業務には対応できます。2級程度の知識があればさらによいでしょう。資格そのものは不要ですが、簿記検定は学習内容が実務に直結するため、資格取得に取り組んでおいて損はありません。
経理事務の仕事は、定型業務はもちろん、ほかの部署からの依頼や電話や来客対応など突発的な業務も発生します。細かい業務を同時進行でこなしていく場面が多いので、マルチタスク能力が必要です。
経理事務の仕事は日次・月次・年次とスケジュールと期日が決まっているものばかりです。そのため事前にスケジュールを把握し、計画的に進めていくスケジュール管理能力が必要です。
経理事務は誰にでもできる仕事ではありません。向き・不向きがはっきり分かれる仕事です。経理事務に興味がある方は、自身に以下のような適性があるのかを確認してみてください。
経理事務は会社に関わるお金を扱う仕事なので、数字やデータの扱いが好きな人に適性があります。1円単位でのミスも許されないので、数字を細かくチェックしてミスを発見することも苦にならないような人は向いているでしょう。数字の動きを追うことで会社のお金の流れが把握できる点にやりがいを感じる方も多いようです。
経理事務は他部署が使った経費の取りまとめや処理を行うなど、社内の多くのスタッフとコミュニケーションを取る必要があります。ときには経費の使い方などについて意見や注意を与える場面もありますが、経理部門としての立場を一方的に押しつけると社内の協力体制が崩れてしまうため、事業部の意見もしっかり聞く耳を持たなければなりません。 また、請求書の内容について取引先に確認をとったり金融機関とやり取りをしたりと外部の人とコミュニケーションを取る機会もあり、相手に不快感を与えないよう配慮できる人が求められます。
経理事務は日々の業務の積み重ねが月次・年次処理へとつながっていく仕事です。仕事をためるだけためて、一気に済ませてしまうようなことはできないので、とにかくコツコツと業務を進める必要があります。そのため計画的に物事を進めるのが得意な人に向いているでしょう。
会社のお金の流れや経営状況に関する情報、従業員の給与など、秘匿性の高い情報に接する機会が多くあります。こうした情報は当然ながら決して誰にも漏らしてはいけないため、口が堅い人でなければ務まりません。「そういう情報を知っている」という顔をするのも経理事務として信頼性に欠ける行動です。
経理事務としての転職を考えている場合、どんな点を意識すれば転職が成功しやすいのでしょうか?
転職を成功させるために大事なのは、これまでの経験やスキルを活かせる企業に応募することです。採用側は自社がやってほしい業務を遂行できる人材を求めており、求職者側にそれを遂行できるだけの経験やスキルがあれば、マッチングが成立しやすくなります。そのためには応募先が求める人材像を把握すること、自分のスキルや経験を棚卸しすること、またそれぞれを照らしあわせる作業が必要です。
採用側はなぜ今の会社を辞めて自社で働きたいのか、その理由を非常に気にします。そのため「経理事務としてどんな貢献が可能なのか」「転職先で実現したいことは何か」という視点を盛り込んだ、説得力のある志望動機をもつ必要があります。また経理事務未経験の場合は、「なぜ経理事務として転職したいのか」についても、説得力をもって説明しなければなりません。
経理事務として活躍するために、経理の専門性を高めることの重要性はいうまでもありません。しかし同時に、企業を取り巻く環境が大きく変化する昨今では、単に専門性を高めればよいというわけにはいかなくなっています。経理以外のスキルも磨く努力が必要です。 たとえばグローバル化にともない英語力がある人やIFRSの知識がある人のニーズが高まっています。またデジタル化にともない、ITスキルがある人や会計システムの導入経験がある人などは市場価値が高いです。
単に数字やデータを取りまとめるだけでなく、それをどのように経営に活かすのかの判断力が必要です。たとえば各部署で毎月かかるコストをデータ化したら、どうすればコスト削減につなげられるのかを考え、施策の提案をするまで行います。単純なデータ入力やデータ整理等の作業はRPAやAIの発展により淘汰されつつあるため、人間である経理事務はそれらのデータを経営判断に活かす力を身につけることが大切です。
転職は精度の高い情報を集めることで成功に近づきます。求人票や企業ホームページに記載された情報はもちろんのこと、社風や上司の人柄など求人票などからは見えない情報も集めることで、ミスマッチを回避できるからです。しかし個人で詳しい情報を集めるのは難しいため、転職サイトや転職エージェントを活用しましょう。独自の情報網や過去の転職支援者から提供された情報など転職サイトやエージェントでなければ得られない情報を提供してくれます。
経理事務は事務職の中でも専門性が必要とされる職種なので、未経験からの転職は難しい面があります。しかしチャンスがないわけではありません。以下のポイントを意識して転職活動を進めることで転職できる可能性があります。
未経験の場合は経理事務全般を任せるというのは難しいですが、業務が細分化されている求人であればチャンスがあります。任された業務にしっかり取り組んでスキルや知識を身につけていくことで徐々に業務の幅を広げることもできます。ただし、業務が細分化されている求人は基本的に規模が大きい企業になります。応募条件が厳しく、年齢もポテンシャルに期待できる若い方が好まれますので、その点は覚悟しておきましょう。
経理事務の実務に活かせる資格としては日商簿記検定やMOS、PASS(経理事務パスポート検定)など多数の種類があります。社会保険労務士や税理士などの士業資格も役に立つ場面があります。いずれも転職で必須の資格というわけではありませんが、スキルや知識レベルを客観的にアピールできる材料となります。特に経理事務未経験の場合はどの程度の知識やスキルを持っているのか採用側が不安に感じるので、資格があるとわかりやすいアピールになるでしょう。
20代の方であれば一般事務や経理アシスタントとして転職し、徐々に経理事務の仕事を覚えていく方法もあります。事務力を向上させつつ、簿記の勉強も続けるなどして土台作りを行えば、いずれ経理事務になれる可能性があります。ただし、30代以降の方は経験が問われるので難しい方法です。
最後に、経理事務が転職活動をする際に利用するべき転職サイトを7社紹介します。応募先の情報収集から年収交渉まで幅広くサポートしてくれる転職サイトを活用しながら、転職の成功につなげましょう。
経理や人事などの管理部門と会計士や税理士などの士業に特化した転職サイトです。管理部門・士業特化型として30年以上の実績がある老舗のエージェントで、これまでに蓄積された転職ノウハウを惜しみなく提供してくれます。業界に詳しいエージェントから専門的なアドバイスを受けられるのも魅力です。求人の52%が年収500万円以上、年収交渉も行ってくれるため年収アップを希望する経理事務人材におすすめです。
※参考:MS-Agent
公認会計士・税理士・経理の転職に特化した転職サイトです。会計業界に詳しいコンサルタントが最新の業界事情や求人状況を踏まえたアドバイスや求人紹介をしてくれます。ジャスネットキャリアは求人掲載企業に対して求める人材像や業務内容など詳細の聴き取りを行うため、精度の高い情報を保有しており、ミスマッチの少ない転職が叶います。求人件数も業界特化型の中でトップクラスに多いため、自分に合った経理事務の求人が見つかるでしょう。
※参考:ジャスネットキャリア
大手リクルートが運営する総合型の転職サイトです。圧倒的な求人があるのが特徴で、経理事務の求人は1,600件以上と豊富にあります。求人選びの際に選択肢の幅が広がるため、登録しておいて損はないでしょう。サポート対象の年齢層は幅広く、20代~30代前半の若手人材にも強いので、経理事務の経験が浅い方や経理事務未経験の若手人材にもおすすめです。
※参考:リクルートエージェント
業界最大級の求人件数を誇る総合型の転職サイトです。dodaはキャリアアドバイザーの対応が丁寧・手厚いと利用者の評判が高いのが特徴で、多数の求人の中から希望に合った求人を絞り込んで紹介してくれます。転職活動の進め方に不安がある方や多くの求人に触れたいという方に向いています。また自分で求人を探して応募する機能とアドバイザーへの相談ができるエージェント機能の両方があるので、自分に合った活動方法を選べるのも魅力です。
※参考:doda
人材派遣大手パソナが運営するハイキャリア人材向けの転職サイトです。経理・人事・総務など管理部門専門の転職サポートがあるので、経理事務の転職にも向いています。大量の経理事務求人があるわけではありませんが、年収が高い求人が多いのが特徴です。利用者の67.1%が年収アップを実現しているため年収を上げたい方は利用を検討しましょう。
※参考:パソナキャリア
20代からの高い支持を得ている総合型の転職サイトです。新卒領域で圧倒的な知名度を誇るマイナビが運営しているため、特に若手の経理事務人材におすすめできます。担当者が親身で話しやすい、熱意ある担当者が多いなど担当者の評判が高いため、転職活動の進め方に不安がある方は相談してみるとよいでしょう。
※参考:マイナビエージェント
管理職や専門職に強みをもつ転職サイトです。ハイキャリア人材やミドル層からの支持が高いため、経理事務の中でも経験豊富で高い専門性がある方に向いています。また、外資系企業やグローバル企業の求人も多いため、英語力を活かした転職を検討中の方にとっても利用価値が高いでしょう。
※参考:JACリクルートメント
経理事務は会社のお金の流れを数値化し、管理する仕事です。仕事内容は仕訳入力や伝票作成などの日次業務、請求書作成や給与処理などの月次業務、決算や税務申告などの年次業務があります。転職を成功させるには経理事務の転職に詳しい転職サイトのサポートを受けるのがおすすめです。