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管理部門の採用
更新日: 2023/05/19
公開日: 2023/05/19

企業が人材を採用できない根本的な理由とプロセスごとのチェックリスト

「欲しい人材を採用できない」と悩みを抱えている採用担当者は多いのではないでしょうか。企業を取り巻く環境や求職者のキャリア観、働き方などはここ数年だけ見ても大きく変化しており、中途採用市場にも影響が出ています。しかし、厳しい状況にもかかわらず求める人材を獲得できている企業もあり、環境の変化のみを理由にすることはできません。

では、採用できる企業と採用できない企業の違いはどんな点にあるのでしょうか?この記事では、採用できない企業の特徴を挙げながら、採用できない理由と採用活動のプロセスごとにチェックするべきポイントを解説します。

企業側も努力しないと採用できない時代が到来

まずは、現在の中途採用市場について解説します。

少子高齢化の影響でどの業界も採用が難しくなっている

少子高齢化にともなう生産年齢人口(15歳~64歳)の減少により、どの業界・職種でも採用が難しくなっています。中小企業庁によると、日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少に転じており、2060年には2015年の約6割の水準まで減少する見通しです。
※参考:中小企業庁|中小企業白書2018 P121

「採用できる企業」と「採用できない企業」は二極化

さまざまな要因が絡み合い、採用が難しい時代になっていることは確かですが、すべての企業で採用できていないわけではありません。創意工夫によって優秀な人材を次々と獲得している企業もあるなど、中途採用市場は「採用できる企業」と「採用できない企業」の二極化が進んでいます。

キャリアが多様化している

採用の難易度を上げている要因として、キャリアの多様化も挙げられます。ひと昔前であれば、大手企業に就職して定年まで勤めあげるのが王道のキャリアとされていましたが、今はさまざまなキャリアがあります。大手企業に固執することなく優良中小企業やベンチャーで挑戦する人材もいます。また、優秀な人材が必ずしも雇われることを選ぶとは限らず、起業やフリーランスといった選択をする人材も増えました。働き手には多数の選択肢があるため、企業の人材を獲得する難易度が上がっています。

求職者の希望が変化している

求職者の希望も変化しつつあります。以前は給与や待遇を最重要と捉える求職者が少なくありませんでしたが、近年はそれよりも「残業がない」「労働環境がよい」「柔軟な働き方ができる」などの条件を挙げる人が増えています。採用企業は、こうした求職者のニーズに応じて、希望の労働環境や働き方を提供する必要性が増しているといえます。

求人票だけでごまかせなくなった

今の求職者は求人票の情報だけで転職活動を進めることはなく、インターネット・SNSをはじめとするさまざまな手段を用いて情報収集します。採用企業が求人票の内容をいくらよく見せようとしても、実態と異なればすぐにバレてしまうでしょう。求人票だけでごまかすことはできず、実態を反映した情報を提供する必要があります。

求職者から選ばれるための工夫が必要な時代

求人広告を出せば応募者が殺到した時代はとっくに終わっています。超高齢化社会の日本では今後も人材難が続くと予想できるため、求職者から選ばれるための工夫が必要です。採用企業はこれまで以上に、誠実かつ真摯な姿勢で求職者と向き合うことが求められます。

よい人材を採用できないとどうなるのか?

ここで、採用を成功させないと何が起きるのかを整理してみましょう。そうすることで、採用活動の重要性をあらためて認識できるはずです。

企業の収益力が向上しない

よい人材を獲得できなければ、イノベーションの創出や組織の活性化、既存人材の成長につながりません。その結果、企業の収益力が向上せず、場合によっては今後収益が悪化する可能性があります。収益力が伸びなければ、従業員に昇給や賞与といった形で還元できません。従業員のモチベーションは上がらず、さらに収益に影響が出るおそれがあります。

既存人材の負担増と離職のスパイラル

人材が必要な状況なのに獲得できないと、そのしわ寄せは当然、今いる人材が受けることになります。業務量が増え、長時間労働につながることで心身の負担は増すでしょう。離職者が増え、残った人材の負担がさらに増すという負のスパイラルに陥ります。

こうなってしまうと、企業の採用はさらに困難を極めます。離職による人手不足が募集背景にある企業の求人は、残業時間が多く、採用されても入社直後から大きな負担を強いられることが予想できるためです。求職者はこのような求人を敬遠するため、応募が集まりません。

人手不足倒産は他人事ではない

ビジネスが順調で黒字経営にもかかわらず、人手不足であることを理由に倒産するケースがあります。「そうなる前に人材を確保できなかったのか?」と思われるかもしれませんが、人材難のこの時代、人手不足倒産は他人事ではありません。昨今ではさまざまな業界で深刻な問題となっています。

採用できない企業の特徴

採用できない企業には多くの共通点があります。自社に当てはまる場合は早急に対策を建てましょう。

経営者が採用を重要課題だと認識できていない

人手不足倒産に代表されるように、採用は事業運営に大きく関わる重要な課題です。しかしこのことを認識できていないために、営業や生産活動が優先され、採用活動は後回しになっている場合があります。これは企業のトップである経営者自身が、採用を重要課題だと認識できていないことが原因です。経営者が率先して採用に力を入れるよう指揮をとれば、おのずと採用の優先度は上がるはずです。

採用基準が定まっていない

採用基準が定まっていないのもよくあるケースです。採用基準が言語化・共有化されていないと、採用担当者によって評価に違いが生じるため、選考に時間がかかります。結果的に候補者を逃してしまう場合もあるでしょう。また採用チームだけで採用基準を決めたことで、いざ採用したときに募集部署とミスマッチが生じ、早期離職につながります。

自社のブランディングや魅力付けができていない

欲しい人材に興味をもってもらい、自社を選んでもらうためには、自社の魅力を伝える必要があります。そのためには自社のブランディングや魅力付けが必要ですが、採用できない企業はメッセージに一貫性がありません。中には採用担当者自身が自社の魅力を語れないケースもあります。

選考フローや面接に問題がある

選考フローや面接に問題がある企業も見受けられます。たとえば、「募集から内定までの期間が長すぎる」「あまり意味のない筆記試験を実施して応募者のハードルになっている」といったケースは少なくありません。面接官の対応が悪く、選考辞退の原因になっている場合もあります。

採用方法が自社に合っていない

採用方法が求める人材や課題に合っていないケースもあります。たとえばダイレクトリクルーティングはトレンドの採用方法ですが、採用ノウハウが必要で長期的に取り組まないと結果が出にくい方法です。ノウハウがない企業やできるだけはやく採用したい企業には難しいでしょう。このような失敗は、採用方法ごとの特長を把握せずに何となく利用していることが原因で起こります。

要求水準に見合った給与や条件を用意できていない

求職者への要求水準が高いのに、給与や条件面は他社に見劣りするために、応募がまったくこないケースもあります。確かに、「労働条件がよくなくても応募したくなる広告をつくればよい」という考え方もあります。しかし、そもそも労働条件が悪すぎると人の入れ替わりが激しいため、いつになっても採用活動が終わらず、根本的な解決になりません。いくら魅力的な広告をつくって入社してもらっても、早期離職の原因になります。

ブラック企業認定されている

労働環境が悪く、ブラック企業認定されている場合も採用はうまくいきません。近年は従業員がSNSや口コミサイトなどに自社の実態を投稿するケースも多く、求職者の目にも触れています。また「常に求人を出し続けている企業は危険(人が辞めやすい)」という程度の情報は、求職者はすでに理解している時代ですので、ブラック企業かもしれないと思うと応募をためらうでしょう。

採用できない場合のチェックリスト

採用できない場合、採用活動の各プロセスで複数の原因がある可能性があります。どのフェーズでどんな原因が考えられるのかをチェックしていきましょう。

応募開始フェーズ

採用活動の初期段階である応募開始のフェーズでは、以下の点をチェックしましょう。

採用方法の選定は適切か

どの採用方法がマッチするのかは、求める人材像や地域特性、企業の規模など複数の要素が関係します。採用方法の特長を理解したうえで、その採用方法でどのくらいの効果が出たのかも測定しながら、自社に合った方法を見極めていきましょう。場合によっては複数の採用方法を併用するほうが効果的なケースもあります。

求職者に積極的な情報開示ができているか

適切に情報開示できていないと、求職者は企業の情報を集められず、応募を躊躇します。求職者に情報を提供する方法としては、求人票以外に自社ホームページやSNS、業界雑誌などがあります。また求人情報の内容も、詳細の業務内容や残業時間など、求職者が本当に知りたい情報を提供できているか確認しましょう。

採用基準が現場と共有されているか

採用基準は現場(募集部署)と共有することが重要です。また採用基準を決める際は、採用チームだけで決めようとせず、募集部署にヒアリングしたうえで決定しましょう。

競合他社の分析はできているか

求職者は応募先を決める際に、複数の求人を比較しています。そのため自社に来てもらうためには、競合他社の分析も欠かせません。年収水準や福利厚生が競合より極端に低いと、その時点で応募の対象外とされてしまいます。

選考フェーズ

選考フェーズに入ってからは、以下の点を重点的にチェックしましょう。

合否の決定と連絡が遅くないか

合否の連絡が遅いのはよくありがちな失敗です。選考から1週間以内には合否を決定し、連絡を入れましょう。候補者を慎重に見極めるために時間をかけるのがよいことだと思うかもしれませんが、求職者にとって選考の時間がかかるのは基本的にメリットがありません。とくに中途採用組は転職活動をスピーディーに進めたいと考えている人が多いので、連絡が遅いことで他社に流れてしまいます。

他社との違いを訴求できているか

選考が始まると候補者と接する機会が増えるため、他社との違いを訴求して自社への興味を深めてもらうことが大切です。ここは応募が始まる前の段階から、自社の魅力や他社との違いを整理しておくようにしましょう。

面接

面接が原因で採用できないとこれまでの各プロセスが無駄になってしまいます。以下の点に注意しましょう。

応募者の見極めに終始していないか

面接官に人材を「選ぶ」という意識が強いと、面接時間のすべてを応募者への質問に充ててしまいます。多数の質問をすることで、面接官としての役割を果たしたものと感じてしまいがちですが、質問だけで面接を終えるのは非常にもったいないことです。面接はよくお見合いに例えられますが、一方的に質問するだけではお互いを理解することはできません。応募者を見極める場というだけでなく、自社について理解してもらう場でもあることを意識しましょう。

自社や業務の魅力を伝えられているか

面接は、自社の特長やどんな人が活躍しているのかなど、自社を知ってもらうための大きなチャンスです。とくに中途採用の場合、即戦力を求められるために業務内容を重視する人が多いので、業務の魅力を訴求できるとよいでしょう。

よい点だけでなく悪い点も伝えているか

自社のよい点だけを伝えるのではなく、悪い点(大変な部分や課題など)も伝えることが大切です。悪い点は面接でいくら取り繕っても入社した後には分かってしまうことですし、後で知ることでギャップを感じて早期離職の原因になります。悪い点を伝えるのは勇気が必要かもしれませんが、誠実な印象を与えられます。また、課題があるからこそモチベーションが上がり入社意欲を高めてくれる人もいるので、正直に伝えるのがよいでしょう。

希望度が一気に下がる言動はしていないか

面接は求職者にとって、応募先の企業の人と実際に会える数少ない機会です。そのため採用担当者や面接官の言動はしっかりチェックしています。たとえば妊娠の予定を聞く、圧迫面接をするなど時代に合わない面接をする人はいまだにいますが、こうしたケースでは求職者の希望度が一気に下がってしまいます。場合によっては面接官の教育やトレーニングも実施しましょう。

内定後

内定を出した後も内定者に対するフォローを行い、安心して入社日を迎えてもらえるよう配慮しましょう。

内定後に放置していないか

内定を出してから入社日までは、内定者が自分を見つめ直す時間ができます。「本当にこの会社に入って大丈夫だろうか」と不安に感じやすくなっているので、放置すると内定を辞退されてしまう可能性があります。入社日まで定期的にコミュニケーションを取り、モチベーションや入社意欲を保ってもらうよう心掛けましょう。

労働条件の提示は丁寧に行っているか

内定から入社までの間に、正式な労働条件の提示を行うのが一般的です。労働条件通知書(雇い入れ通知書)を書面で交付するとともに、口頭でも丁寧に説明しましょう。内定者が納得・安心することができ、入社後の早期離職や労使トラブルも回避できます。

入社後

入社直後は慣れない環境で精神的な負担が大きい時期です。また、入社前と入社後のギャップを感じやすく、この時期も早期離職のリスクを抱えています。

入社直後のフォローはできているか

入社後は現場でのフォローが中心となりますが、採用担当者としても中途採用者を受け入れる雰囲気や環境づくりなどができているかなど、現場に働きかけるのがよいでしょう。入社後しばらくは定期的に面談の機会を設け、中途採用者の声を聞くことも大切です。

即戦力だからと仕事を丸投げしていないか

即戦力だからと、ろくに仕事の説明もせずに仕事の丸投げをしていないでしょうか。業務経験のある中途採用者とはいえ、新しい職場での仕事のやり方やプロセスなど説明しないと分からないことは多数あります。こうした配慮のなさが不信感を生むため、中途採用者に対しても説明や教育の時間はきちんと取るようにしましょう。

中途採用者を品定めするような風土はないか

既存社員の中には、新しい人材をよそ者扱いし、入社を歓迎しない雰囲気を出してしまう人もいます。たとえば困っていてもサポートしないなど、中途入社した人材を「品定め」「お手並み拝見」するような風土はないでしょうか。既存社員がこのような考え方だと、中途採用者は職場になじめず、早期離職につながってしまいます。組織がこうした雰囲気を持っている場合は、既存社員の教育も含めて受け入れ体制を構築することが重要です。

まとめ

中途採用において企業が欲しい人材を採用できない場合、環境の変化などの外的要因のほかに採用活動そのものに理由があるケースが多いです。チェックリストをもとに、採用の各プロセスで改善策を講じていきましょう。

この記事の執筆者
キャリアアドバイザー
佐藤 えりな
管理部門特化の転職支援サービス『BEET』のキャリアアドバイザー。経理財務、人事労務、法務職の方の転職支援を強みをもっており。士業資格者の転職支援実績と、事業会社の両軸サポート実績多数。面談マン独度、求人マッチング精度に定評がある。