公認会計士のキャリアは多様化しており、転職活動の方法も多数あります。求職者の選択肢が豊富なのはよいことですが、採用側のハードルは上がっており、公認会計士の確保に苦労するケースが増えています。希望する公認会計士を獲得するためには、自社の採用課題を洗い出し、そのうえで対策を立てることが大切です。この記事では、公認会計士市場の現状を説明したうえで、採用課題を解決するための対策について解説します。採用方法ごとのメリット・デメリットもお伝えするので、特長を把握して自社に合った採用方法を選定しましょう。
公認会計士の採用がうまくいかないとお悩みの方へ
・直近ですぐに採用したいのに候補者が集まらない
・グループ会社の連結決済経験など、スキルの高い会計士を採用したい
・監査法人出身の会計士をCFOとして採用したい
・初めての会計士採用でノウハウがなく、魅せ方がわからない
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まずは公認会計士市場の現状について解説します。市場の現状を知ることで、採用課題の解決に何が必要なのかを改めて認識できるでしょう。
監査に関する品質管理基準の厳格化やIFRS(国際財務報告基準)導入企業の増加、企業の不正・粉飾決算に対する社会的要請などから、公認会計士の業務量は増えています。そのため公認会計士を求める会計事務所や企業・法人は多く、求人を出す場合は競合が多い状況です。
業務量が増えている一方で、公認会計士は不足感があります。高度な専門職の公認会計士は数が限られているうえ、独立や転職もしやすい職種なのでもともと離職率は高い傾向があります。自分のやりたいことができなければすぐに転職するため、つなぎ止められない法人や事務所も少なくありません。
少子高齢化、生産年齢人口といった社会背景とも相まって、公認会計士市場は売り手傾向にあります。優秀な会計士には多方面からオファーがあるため、採用に苦戦するケースが増えてきています。
以前と比べて求職者の選択肢が増えたことも、採用が難しくなっている理由のひとつです。
転職活動の方法はもともとある求人誌やハローワークなどに加えて、転職エージェントに求人サイト、ダイレクトリクルーティングなど多様化しています。求職者が媒体ごとに分散しているため、採用側もどの媒体を使うべきか判断に迷うケースがあります。
公認会計士の応募先・転職先も多様化しています。監査法人や会計事務所・税理士法人のほかにコンサルティングファームや事業会社、ベンチャーCFO、投資銀行などがあります。求職者の選択肢が豊富なので、採用側は欲しい人材をピンポイントで獲得するのが難しくなっています。
VUCAと呼ばれる先行き不透明なこの時代、少しでも条件のよいところで働きたいと考える公認会計士は少なくありません。働き方改革が浸透し、残業したくない人も増えています。条件がよくないと応募につながらないため、以前なら応募があった条件設定でも反応が少なくなっています。
上記のような理由から、採用側は「選ぶ」のではなく「選ばれる」時代にいると認識する必要があります。求人広告を出し、ただ待っているだけで応募があるわけではありませんし、コストをかければ採用できるというわけでもありません。公認会計士を惹きつけるために努力や創意工夫をすることが求められます。
ここからは、採用方法別にメリット・デメリットを紹介します。採用方法の特長を理解したうえで、自社に合った方法を選びましょう。
ハローワークは無料で掲載できるため、採用活動に費用をかけられない小規模事務所などにとっては費用面のメリットがあります。
一方、地元に密着した求人を扱うため、その地域の求職者にしか閲覧されない可能性があります。たとえば、現在東京にいて地方での転職を考える公認会計士がその地域のハローワークで求人を探すというのはハードルが高いため、候補者になり得るのは基本的に今地域にいる公認会計士になります。
また、営利企業である他媒体のように掲載企業のチェックは厳しくないため、いわゆるブラック企業も掲載されています。このことは求職者にも知られているため、求職者がハローワークを敬遠する傾向も見られます。
求人誌は人材紹介エージェントや求人サイトが網羅していない地方では有効な場合があります。求人広告の掲載料は必要ですが、人材紹介エージェントなどに比べるとかなり低価格なので、費用をかけられない法人や事務所でも利用しやすいでしょう。求人誌といってもインターネット広告と連動しているケースも多く、インターネットで転職活動を行う若手~中堅層にも対応できる場合があります。
一方で、一般に求人誌というとパート・アルバイトや人材派遣などの求人が多く、加えて公認会計士のような高度な専門職の募集はないというイメージを持っている人は少なくありません。また、ハローワークと同様に求人誌も地域の求人を中心に扱うため、その地域にいる公認会計士しか見てくれない可能性が高いです。
自社の採用ホームページを見て応募してくれた場合は、媒体を利用するコストはかかりません。また外部の媒体を利用する場合は求人情報の文字数や表現などに制約があるケースが多いですが、自社のホームページなら自由に設計できます。伝えたい内容を伝えたいだけ掲載できるのはメリットです。
一方、ホームページの作成・運用スキルが必要なので、自社に対応できる人材がいないと難しい方法です。また知名度の低い法人や事務所の場合、そもそも認知されていないため求職者が採用ホームページをチェックしにきてくれることはありません。求職者への情報提供の場としてあるのが望ましいですが、ホームページのみで応募者を募るのではなく、ほかの媒体と併用するのがよいでしょう。
転職サイトは現在、求職者が主に利用する活動方法のひとつとなっています。また、全国どこにいてもインターネットを使って検索できるため、ハローワークなどと比べて幅広い求職者に閲覧してもらえます。人材紹介会社と比べると掲載費用も低めに設定されており、採用側にとっても利用しやすい媒体です。
一方で、出稿のしやすさから競合となる求人が多いです。自社よりも給与や条件、業務内容などが魅力的な求人があると、求職者はそちらに流れてしまう可能性が高いでしょう。
応募者を待つのではなく、企業自らが求職者に直接アプローチする採用手法です。企業がよいと思った人材にアプローチするため、自社に合わない人材からの応募しかないといった悩みを解決できます。また自社を知らない求職者にもこちらからアプローチできるため、幅広い層の中から候補者を探すことができます。
一方、スカウト対象者の選定や魅力的なスカウトメールの作成、返信対応など採用工数が多いのが難点です。採用担当者のスキルが必要なので、どの法人・事務所でも使える方法ではありません。
人材紹介エージェントも求職者の主な転職活動方法のひとつなので、登録者が多く、多様な人材と出会える可能性があります。ほかの媒体と異なり、候補者の選定や応募者とのやり取りはエージェントが代行します。採用担当者はエージェントとの打ち合わせで希望の人材像などを伝えておくだけで、あとは候補者が決まった場合の選考に集中できます。採用工数を大きく削減できるため、採用担当者の業務負担が減るでしょう。
一方、採用コストが高額になりやすいのが難点です。一般にエージェントへ支払う費用は採用した人の年収に30%~35%の料率をかけて算出するため、公認会計士のような高年収の職種を採用する場合は費用が高額になります。ただし、採用が決まった段階で発生する成功報酬型が主流です。求人誌や転職サイトのように求人を出し続けている限り費用が発生することはないので、費用対効果は高いといえます。
公認会計士の採用課題は法人・事務所ごとに異なりますが、主には「応募者の数や質に課題がある」「採用面接がうまくいかない」「内定後の辞退が多い」の3つが挙げられます。
まずは、応募者の数や質に課題がある法人・事務所に向けて、自社の希望に合った応募者数を増やすポイントを解説します。
現場である募集部署から、求める人材像を細かくヒアリングしましょう。担当してほしい業務内容や期待する役割、ポジション、人物特性などです。これに、法人・事務所としてどんな人材に来てほしいのかを加え、求人情報を作成していきます。求める人材像を明確にすることで、ターゲットに対して的確なアプローチができます。
求職者に対しては、詳細の情報を開示することが大切です。求人票だけでなく自社のホームページやSNSなど複数のチャネルを使って情報発信しましょう。認知度が高まるのはもちろんですが、自社への理解を深めたうえで応募してもらうことで、自社にマッチした候補者である可能性も高まるでしょう。反対に、情報開示の量が少ないと求職者は不安に感じるため応募に至りません。
公認会計士の採用でとくに大事なのは業務内容や担当業務です。優秀な人材ほど、給与や条件だけでなく「どんなことができるのか」を重視します。求人情報を精査し、どのような仕事をしてもらいたいのかが伝わる内容に仕上げましょう。
要求水準が高いのに給与や待遇が低水準だと応募に期待できません。できるだけコストをかけずに高いレベルの業務をやってほしい気持ちは理解できますが、それでは競合に負けてしまいます。公認会計士の年齢や業務ごとの平均年収、他社の動向などをリサーチし、適正なバランスで給与・待遇を設定しましょう。
求める人材と採用方法が合っていない場合は採用方法の見直しも検討しましょう。たとえば、20代~40代の人材は転職活動にインターネットを使うのが当たり前なので、求人誌やハローワークは見ていない可能性があります。どの採用方法が有効なのかは募集地域の特性によっても異なりますが、何となく選ぶのではなく、効果を予測・検証して適切な方法を選択することが大切です。
続いて、採用面接がうまくいかないことが課題の法人・事務所に向けて、採用面接の注意点をお伝えします。
面接は相互理解を深める場所だと捉え、一方的な選考にならないように気をつけましょう。応募者は面接官がどんな人なのかも見ているので、言動に問題があれば入社を躊躇します。面接ではよい情報も悪い情報もきちんと伝えることで、誠実な印象を与えられます。
面接は応募者への質問がメインになりがちですが、質問だけでなく自社の強み・魅力を伝える時間も設けましょう。欲しいと思った人材に熱意をもって伝えることで、入社意欲が高まる可能性があります。このとき、所長の自慢話にならないようにすること、他社との違いがわかるようにすることなどが大切です。
面接では業務内容や担当業務はもちろん、入所後に何を期待しているのかを明確に伝えましょう。応募者に自分の役割を理解したうえで入所の可否を判断してもらうことができます。入所した場合はミスマッチが少なく、高いモチベーションで業務にあたってもらえます。
現場である募集部署の人員との面談機会を設けることも重要です。公認会計士のような専門職の場合、募集部署でないと判断できない部分があります。また一緒に働くことになるのがどんな人たちなのかを知ってもらうことで、応募者の入社意欲を高めたり不安を払拭したりできます。
内定後の辞退が多いことが課題の法人・事務所は、面接後の対応に関して以下の点に配慮しましょう。
面接が終わってから合否の連絡を入れるまでに、時間をかけすぎないことが大切です。合否の連絡が遅いと求職者は不採用になったものと考え、内定をもらったほかの企業へ流れるか、ほかの企業への応募に注力するケースがあります。目安は面接から1週間~10日以内ですが、選考結果がわかる時期を伝えておくほうが誠実な印象です。
反対に、内定受諾の回答期限は短すぎないことが大切です。候補者の囲い込み目的で「即日」「明日中」など極端に短くする企業もありますが、逆効果です。短期間では判断できないと感じてほかの企業へ流れてしまうか、内定受諾後に辞退されてしまう可能性があります。キャリアを決める重要な判断なので、家族との話し合いも含め、1週間程度はじっくり考えてもらうようにしましょう。そのほうが入所後にも定着しやすく、結局は採用の負担が減ります。
内定を出した後は、内定者と定期的に連絡を取りましょう。この時期は内定者の不安が募る時期なので、放置すると内定を辞退されてしまいます。メールや電話等で連絡を取る、オフィス見学の機会を設けて配属先メンバーとコミュニケーションを取ってもらうなどして、入所後のイメージを持ってもらいましょう。
最後に、公認会計士の採用に強みをもつエージェントを5社紹介します。
公認会計士・税理士・経理人材の採用に特化した人材紹介エージェントです。求職者と企業の両方を1人のアドバイザーが担当する両手型のエージェントなので、ミスマッチの少ない人材を紹介してもらえます。
※参考:Hi-Standard(ハイスタ会計士)
公認会計士とUSCPA専門のエージェントです。登録者は20代・30代が多いため、若手会計士を採用したい法人・事務所に向いています。会計士業界に精通したアドバイザーが経営課題を採用面からサポートしてくれます。
※参考:マイナビ会計士
会計、税務、経理・財務領域の人材紹介に特化したエージェントです。公認会計士が創業した老舗のエージェントなので、豊富なノウハウとプロフェッショナル人材ネットワークがあります。
※参考:ジャスネットキャリア
管理部門・士業に特化したエージェントです。業界特化型のエージェントとして30年以上の経験とノウハウがあり、知名度も高いため多数の登録者がいます。若手から重要ポジションまで多様な人材ニーズに対応してもらえます。
※参考:MS-Japan
会計、税務、管理部門に特化した人材紹介エージェントです。登録者の年齢層は20代~50代までと幅広く、成長フェーズや事務所の規模感に応じて自社のニーズにマッチする人材を紹介してもらえます。
※参考:レックスアドバイザーズ
公認会計士のニーズが高まる一方で、キャリアや転職活動方法の多様化などの影響で採用は難しくなっています。自社の採用課題を洗い出し、適切な対策を講じましょう。地域特性や自社の規模感、ほしい人材像にあった採用方法を選定することも重要です。