公認会計士は人材不足傾向が強まっており、採用に苦戦する法人や会計事務所が少なくありません。とくに大手と比べて認知度や条件面で劣る中小法人や事務所では、思うように公認会計士を獲得できず、人材不足が深刻化しています。人材不足は今いる人材の負担増や事業の不安定化にもつながるため、早急に解決するべき課題です。そのためには、自社でなぜ公認会計士を採用できないのか原因を把握し、原因に合った対策を講じる必要があります。
この記事では、公認会計士が人材不足である理由と、採用課題別の原因と対策について解説します。
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公認会計士は人材不足だと言われています。公認会計士になる人が減っているわけではないのですが、なぜ人材不足に陥っているのでしょうか。
人材不足の理由として、「そもそも公認会計士試験の合格者数が減っているのではないか?」との疑問が浮かびます。しかし直近5年の公認会計士試験合格者(最終合格者)の数は以下のように1,300人前後で推移しています。合格者数がとくに減っているということはありません。
また登録要件を満たして公認会計士として登録をすると、日本公認会計士協会の会員になります。この総会員数は2020年時点で3万9,198人と、10年前である2010年の3万92人と比べて増えています。
※参考:日本公認会計士協会|会員・準会員数の推移
人材不足の理由としてまず考えられるのは少子高齢化の影響です。ご存じの通り日本は少子高齢化が進んでおり、生産活動の中心である生産年齢人口(15歳以上65歳未満)が減少しています。これによってどの業界・職種でも人材不足に悩まされるケースが増えており、公認会計士も例外ではありません。公認会計士が高齢化によって大量に離職すれば、おのずと人材不足に陥ります。
※中小企業庁|中小企業白書
経済のグローバル化にともない、IFRS(国際財務報告基準)を導入する企業が増えており、IFRS導入支援を行える公認会計士は足りていません。また、監査の品質管理基準の厳格化にともなうドキュメント量の増加や、大企業の不正・粉飾決算に対する社会的な要請などで業務量が増えています。監査法人を中心に、もともと公認会計士は業務量の多い職種です。しかし上記のような理由からさらに忙しくなっており、公認会計士を辞めたり資格を直接活かさない職場へ転職したりする人も出てきています。
公認会計士のキャリアといえば、独占業務に従事できる監査法人で働くのが一般的でした。しかし近年の会計業界では公認会計士の監査法人離れが進んでおり、事業会社の財務・経理部門やCFO、コンサルティングファームなどさまざまな場所で公認会計士の募集があります。また監査法人は残業量が多く業務がルーティン化しがちなので、法人内で長くキャリアを積むよりは短期間で専門スキルや知識を身につけ、早く外へ出たいと考える公認会計士も増えているようです。
公認会計士は監査法人に限らず多様なキャリアを選択できる時代なので、以前のようにひとところに公認会計士が集まるわけではありません。このことが、公認会計士が人材不足になるひとつの要因になっています。
上記のような理由から、公認会計士は人材不足傾向にあり、採用に苦戦する監査法人や会計事務所が増えています。とくに十分な給与や条件を用意できない中小の監査法人や事務所ではなかなか採用に至らず苦戦を強いられています。
公認会計士の採用に苦戦している監査法人や会計事務所も、ただ何もせず待っているわけではありません。たとえば以下のような対策を採用している法人・事務所があります。
柔軟な働き方やその他の条件を提供することで入社意欲を高めてもらおうという工夫です。たとえばフレックスタイム制の導入やテレワークが挙げられるでしょう。女性会計士が入社を躊躇しないよう、育児期間中の短時間労働やテレワーク、子どものイベント時に休暇を取りやすい仕組みなど育児と仕事とを両立しやすい環境作りもひとつの対策です。
中途採用では即戦力としての活躍に期待するのが通常ですから、応募条件として経験年数を縛るケースも多いでしょう。しかしある程度の経験年数をクリアする公認会計士は多方面から声がかかるため獲得するのは簡単ではありません。また、経験年数が長いからといって必ずしも自社にフィットするとは限りません。
そこで経験年数は設定せず、人柄やポテンシャルを重視する法人・事務所もあります。この場合、応募書類の段階ではできるだけ不採用にせず、まずは会ってみるというスタンスも重視されています。
監査法人を出て事業会社に転職したものの、ふたたび監査法人に戻りたいと希望する公認会計士もいます。事業会社はワークライフバランスや安定性などの理由で人気が高いですが、実際に転職してみると「専門性のない業務が多い」「組織になじめない」などの理由で監査法人のほうがよかったと感じる会計士は少なくないようです。
以前は、いったん事業会社に転職すると監査法人に戻るのは難しいと言われていましたが、近年の人材不足から出戻り会計士は需要が高まっています。業務のブランクなど一定の懸念材料はありますが、「徐々に感覚を取り戻してくれれば」といった長い目で見れば、人材不足を打破する有効な対策のひとつでしょう。
公認会計士の採用に苦戦している法人・事務所がまずやるべきことは、採用できない原因の把握とそれに合った対策の構築です。
採用に苦戦している場合に、いつも同じようなところで躓いているケースがあります。採用のどの段階で躓いているのかを把握しないと、苦戦している原因がわからず、適切な対策を講じられません。
最初に考えられるのは、採用活動の初期ステージである応募の段階で躓いているケースです。「応募がまったくこない」「応募者が少ない」「応募自体はあるものの自社にあった人材ではない」などが該当します。
次に選考の段階で躓いているケースです。「応募者はいるのに採用に至らない」「選考の途中で辞退されてしまう」といったケースが該当します。
最後は内定後~入社後の段階で躓いているケースです。「内定を出しても辞退されてしまう」「せっかく入社したのに数日で辞めてしまった」などのケースがこれにあたります。
どこで躓いているのかは、応募者数や選考ステージごとの面接通過率、内定受諾率などのデータを取ることで明らかになります。自社が躓いているステージを把握したら原因はある程度予測できますので、原因に合った対策を講じることが大切です。もちろん「まんべんなく、どのステージで失敗することもある」という場合は、すべてのステージで原因を探り、対策する必要があります。
ここからは採用課題別に原因と対策を紹介します。
「応募がない・少ない」ことが採用課題となっている企業の原因と対策です。考えられる原因としては情報量の少なさや採用方法のミスマッチがあります。
原因のひとつは情報開示の少なさです。
上記のように情報開示が少ないと、知名度の低い中小法人や事務所はそもそも求職者に認知されていない可能性があります。また求職者を惹きつけることはできず、むしろ情報量の少なさが不安材料になるため、応募を敬遠されてしまいます。
採用方法のミスマッチについては、たとえばダイレクトリクルーティングは採用のトレンドですが、採用担当者のスキルが必要なのでそもそも採用に苦戦している企業では難しい場合があります。また欧米と比べて日本ではヘッドハンティングが浸透していないため、スカウト経由で転職してくれる候補者が少ない場合があります。採用方法の特長を理解し、自社に適した方法を選ぶことが大切です。
「自社が求める公認会計士からの応募がない」ことが課題の場合の原因と対策を紹介します。
自社が求める公認会計士像が不明確だと、募集の段階でターゲットに的確な働きかけができません。漠然と「いい人がいれば採用したい」のではなく、欲しい公認会計士像を言語化することが大切です。
質の高い候補者ほど、「自分はこういう業務をしたい」という希望が明確になっています。しかし業務の魅力を訴求できていないと、求職者が自分に合うのかわからず、応募をやめてしまいます。求人情報の内容を見直し、給与や条件だけでなく業務の魅力が伝わる内容にしましょう。
求人情報に期待する役割や業務内容は細かく書かれているものの、それに見合うだけの年収ではないケースも、希望する人材からの応募は少なくなります。優秀な人材は相応の年収を提示されたうえで各所からオファーを受けているので、要求ばかりが大きく年収が低い職場にわざわざ応募する人は少ないでしょう。公認会計士の平均的な年収や他社の求人情報なども参考にしながら、自社が求める水準と提示年収のバランスをチェックしてみましょう。
せっかく応募があっても、選考の途中で辞退されてしまうことが課題となっている場合は、以下の原因と対策が考えられます。
選考に時間をかけすぎると求職者が不安に感じ、「不採用だった可能性が高い」と判断してほかの法人・企業へアプローチする場合が多々あります。中途採用では、できるだけスピーディーに合否の結果を出すことが大切です。面接日から1週間以内を目安に結果を伝えるのが望ましいでしょう。
自分たちが「採用する立場の人間」という意識が強いと、面接では質問に終始してしまう場合があります。面接は相互理解の場所なので、応募者への理解を深めると同時に自社の魅力を知ってもらうことも重要です。面接では、事業や業務内容、どんな人が活躍しているかなど自社のことも語るようにしましょう。
上から目線の質問や性差別にあたる質問をするなど、時代に合わない面接をしていると「こんな会社では働きたくない」と思われてしまいます。面接官に問題がある場合は面接官の教育やトレーニングなども必要です。また求職者は面接の開始前後などに職場の雰囲気もチェックしています。今の職場の労働環境を改善するなどして、雰囲気のよい職場づくりに取り組むことも大切です。
入社してもすぐに辞めてしまう場合は、入社後ではなく、採用活動の段階で原因がある場合が多いです。
早期退職のよくある理由のひとつに「職場の風土が合わなかった」というものがあります。これは、採用活動の中で自社の組織風土を説明していないか、求職者に伝わるように説明できていなかったことが原因です。給与や条件面だけでなく、組織風土やカルチャー、職場の雰囲気などよく理解したうえで入社してもらうことが大切です。
人材不足を解消したいばかりに、よい部分だけを強調した求人票や求職者を誤解させるような求人票を作成していないでしょうか。最初の応募者は増えるかもしれませんが、実態と差があれば早期に退職につながってしまいます。実態を反映した誠実な情報を提供し、そのうえで入社してもらうことで定着してくれるでしょう。
内定後から入社までに放置していると、その期間中に応募者の入社意欲が下がってしまい、入社日になって「やっぱり辞めたい」と言われる場合があります。入社するまで定期的にコミュニケーションをとり、モチベーションを維持してもらえるよう働きかけましょう。その際、採用理由を伝えることで「単に人手不足だから合格になったのでは?」といった応募者の不安を払拭できます。
公認会計士の採用に課題を抱えている法人・事務所は、ここまで紹介した対策を講じるとともに、人材紹介会社(エージェント)へ相談することもおすすめします。
エージェントが保有する人材データベースの中から、自社の希望に合った人材を探して紹介してくれます。エージェント側が適切な求職者を探してアプローチするため、認知度の低さや情報開示の少なさから応募がこなかった法人・事務所でも、候補者と出会うことができます。とくに公認会計士の採用に特化した人材紹介会社であれば、公認会計士が多数登録しているため、自社にマッチする人材を紹介してもらえる可能性が高いでしょう。
エージェントが候補者にアプローチする際、自社に代わって自社や業務の魅力を伝えてくれます。自分たちでアピールするのと異なり、客観的な第三者の立場から伝えることで、説得力や信用性が増します。
ただし、エージェントも嘘を言って候補者を騙すことはできませんので、まずはエージェントに対して自社の魅力を理解してもらう必要があります。そのためには、エージェントとしっかりとコミュニケーションを取り、関係構築に努めることも大切です。
エージェントは単なる人材紹介にとどまらず、採用活動全体をサポートしてくれます。採用に問題点があればプロの視点からアドバイスしてくれるため、自社の採用がうまくいかない原因が見えてくるでしょう。
公認会計士の採用に苦戦する原因は、採用活動のステージごとに異なります。まずは自社がどのステージで躓いているのかを把握し、原因分析と対策の構築に努めることが大切です。的確なアドバイスや採用活動の効率化を求めるなら、公認会計士の採用に強いエージェントへの相談も視野に入れましょう。