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管理部門の採用
更新日: 2023/11/06
公開日: 2023/05/19

経理の採用が難しい根本的な理由と採用活動の見直しポイントを解説

「経理は人気が高い事務職だから簡単に応募者が集まるだろう」と思っていたのに、応募者がまったく集まらない、または求める人材像にマッチしないといったケースはよくあります。こうした失敗は、経理という職種の価値や採用市場の状況を見誤っていること、採用活動や採用手法の選定に問題があることなどが原因で起こります。経理は事務職の中でも専門性が高く、転職市場に経験者がなかなか出てこない職種です。そのため採用担当者は経理の採用で苦戦を強いられるケースが少なくありません。

経理の採用に課題を抱えている企業は、自社に合った経理人材を獲得するためにどんな点を見直せばよいのでしょうか?この記事では、経理の採用市場や経理の採用が難しい理由に触れながら、求人情報や採用活動の見直しポイントについて解説します。採用手法の種類や手法ごとの特徴、おすすめの手法についても見ていきましょう。

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目次

経理の採用市場はどうなっている?

まずは、経理の採用市場について解説します。

求職者有利の売り手市場

2022年時点では、経理は求職者有利の売り手市場だと言われています。経済のグローバル化にともないIFRS(国際会計基準)を導入する企業が増えていること、業務の効率化やDXの推進などにより経理部門でも会計システムの入れ替えが進んでいることなどから、企業における経理の人手不足感が強まっているためです。

経理の経験者は市場になかなか出回らない

経理を採用したい企業では、大半が経理経験者を求めます。経理は少数人員で構成されているケースが多く、自社で経理人材を育てる余裕がないことが多いためです。しかし経理経験者は転職市場になかなか出回りません。理由として、経理はひとつの会社で長く勤めたいと考える人が多く、人材の流動性が低いことが挙げられます。また人手不足なので、市場に経験者が出てきてもすぐに他社で内定が出てしまい、人材に出会えるチャンスが少なくなっています。

経理の採用は難しいから工夫が必要

企業では優秀な経理人材を求めているにもかかわらず、経験者が市場に少ないとあって、経理の採用は簡単ではありません。経理は直接的な利益を上げないバックオフィス部門の職種ですが、事業経営に欠かせない重要なポジションでもあります。経理の採用は後回しにせず、工夫しながら対応することが必要です。

経理の採用が難しい6つの理由

経理の採用が難しい理由を、さらに詳しく掘り下げてみましょう。

ほかの事務職と比べて専門性が高い

一般に事務職は人気が高いため応募者が殺到しやすく、母集団の形成はそれほど難しくありません。その中から自社に合った人材を探しやすいでしょう。

しかし経理をほかの事務職と同じように考えると、予想外に応募が少ないということが起こります。経理はほかの事務職と比べて専門性が高く、もともと経理スキルを持った人材が限られているためです。企業側が設定する採用基準が高いため、求人情報を見て応募を諦める人が多いことも影響しています。

業務範囲が広いため自社の業務にマッチする人材に出会いにくい

経理経験者といっても、専門性の高い業務を細分化して担当する大企業の経理経験者と、一人で幅広い業務を担当する中小企業の経理経験者とでは業務経験の内容が異なります。また給与計算や税務は経理以外が担当することがあるなど、企業によってどこまでの業務を経理に任せるのかはまちまちです。経理経験者の中でもさらに自社の業務にマッチする人材となると、ピンポイントで出会うのは難しくなっています。

人物特性も重要な職種

経理は会社のお金を扱う職種である以上、高い倫理観が求められます。さまざまな部署と関わるため、コミュニケーション能力も高くなければなりません。単に経験やスキルがあればいいというのではなく人物特性も重要な職種なので、よい人材に出会える確率がさらに低くなります。

経理業務の複雑化にともない採用基準が高くなっている

税法の度重なる改正やIFRSへの対応などを背景に経理業務は複雑化しています。これにともない企業側が経理に求めるハードルも高くなっており、応募があっても採用にまで至らないケースが多数あります。

RPAやAIの台頭で職種自体の人気が下がっている

RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やAIの台頭で、各企業の経理部門では事務作業の効率化が進んでいます。仕分けや請求書作成などの定型業務は自動化される流れになっているため、「将来、経理の仕事はなくなるのでは?」と不安視し、別の職種へ切り替える人も出てきています。職種自体の人気が下がっているため人材の確保がより困難になっている状況です。

生産年齢人口が減少している影響もある

経理の採用に限りませんが、少子高齢化にともなう生産年齢人口(15歳~64歳)の減少も影響しています。中核の労働力となる人口が減っているため、必然的に人手不足が起こりやすい状態になっているのです。この傾向は今後ますます強まると予想されます。

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経理人材を採用できないことで生じる弊害

経理の採用は営業などの事業部の採用と比べて後回しにされがちですが、経理人材を採用できないと大きな弊害が生じます。

内部不正やミスのリスクが上がる

新しい経理人材を採用しないと業務の属人化やブラックボックス化が進み、内部不正の原因になります。少ない人員で回すことでミスのリスクも上がるでしょう。不正やミスが起こると企業の信用問題に発展し、業績や企業価値の評価に影響するおそれがあります。

既存スタッフの負担と離職者が増加する

人材を採用しなければ既存スタッフの頑張りに頼るしかなく、既存スタッフの負担は増加します。その結果、離職者が続出し、さらなる人手不足に陥るという悪循環が起こります。

人手不足にある中で優秀な経理人材は引く手あまたなので、既存スタッフとしても転職するハードルはそれほど高くないでしょう。他社の条件や環境がよければ転職してしまうかもしれません。採用担当者としては、経理人材の獲得に向けた活動を進めると同時に、離職者を出さないことも重要な仕事となります。

経理の求人情報を出す際のポイント

ここからは、経理の求人情報を出す際に意識したいポイントを解説します。

求職者が知りたい情報を開示する

求人情報を開示する際には「求職者が知りたい情報を網羅しているのか」という視点が重要です。最低限の情報を与えてあとは面接で説明するというのは今の時代に合いません。情報を出し惜しみする企業を求職者は信用しないので、そもそも応募にすら至らない場合があります。

求職者が知りたい情報は、給与や労働時間などの基本的な労働条件はもちろん、「実際の残業時間」(例:繁忙期は何時間、閑散期は何時間)「業務内容の詳細」「期待する役割」「自社で展開できるキャリアパス」などが考えられます。

求める人材像を明示する

どんな経理人材を求めているのかを明示しましょう。たとえば「将来的にはマネジメント業務もやってもらいたい」「主体的に働ける方を希望」といった具合です。経理は職人気質な人も多く、出世には興味がない、マネジメントはやりたくないといった人も少なくありません。自社では将来的にマネジメントもやってほしいのに求職者はそうでない場合はミスマッチが起こります。求める人材像を明確にすることで、求職者の側も自分とマッチするのかを考えて応募するためミスマッチが減るでしょう。

自社の魅力をアピールする

今は企業が求職者を選ぶのではなく、求職者から選ばれる時代です。市場になかなか出回らない経理人材であればなおさらそうした意識が大切になります。そのため応募条件をつらつらと並べるだけでなく、自社の魅力もアピールできる求人情報を作成しましょう。たとえば福利厚生が充実している、残業が少なくてワークライフバランスを実現しやすいなど、自社の従業員が感じている魅力をアピールするとよいでしょう。

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経理採用に苦戦している企業が見直すべきポイント

経理の採用に苦戦している採用担当者は、以下の点を見直しましょう。

採用活動に「求職者目線」が入っているか

優秀な経理人材を採用したいと思うほど、企業が求職者に求める条件ばかりが増えていきます。しかし求職者目線、すなわち「求職者が働きたいと思える企業かどうか」は採用活動で極めて重要な視点です。

採用活動を効率化するためには、求人情報の作成段階である程度応募条件を設定することは必要ですが、それだけで終わってしまわないよう注意しましょう。求職者が魅力に感じるポイントを訴求することが大切です。

ペルソナが言語化・共有できているか

ペルソナ(自社が採用したい人物像の詳細)を言語化し、採用チーム全体で共有できているか確認しましょう。

採用活動ではペルソナを設定して求める人材像を明確にすることが大切ですが、言語化・共有しないと採用担当者や面接官によって解釈にブレが生じてしまいます。その結果、面接でも担当者ごとに評価が分かれ、なかなか採用に至らないということが起こります。ペルソナを設定したら言語化して紙に書き出し、採用担当者と面接官、採用部署も含めて共有しましょう。

他社にはない自社の強みを明確化できているか

自社の強みと、他社と差別化できるポイントは明確になっているかを見直しましょう。

採用側が自社の強みを把握できていなければ、求職者に対して効果的なアピールはできません。他社にはない自社の強みはなにかを明確にし、求人情報に反映させること、面接等でアピールすることが大切です。

給与や待遇、その他条件に改善の余地はないか

給与や待遇、条件を見直すことも必要です。

間接部門にあたる経理は事業部のように利益を生む職種ではないため、給与や待遇が低く設定されがちです。しかし経理は事業運営に不可欠な職種です。採用できないと不正やミスの原因になり、ひいては企業価値の低下につながります。経理の価値を改めて考え、給与や待遇を再考する余地はないか検討してみましょう。経理の重要性を認識している企業は、適切な給与や待遇を用意しているため、優秀な経理人材はそうした企業へ転職してしまいます。

とはいえ、資金力の問題で給与や待遇を上げるのが難しい企業も多いでしょう。その場合は給与や待遇以外の条件面を改善することでも効果があります。たとえば残業を減らす、テレワークや時短勤務を選べるようにするなどの条件です。近年は給与や待遇はそこそこでも、残業が少なく私生活を充実できる職場を選びたいといった価値観の方が増えています。「資金がないから仕方がない」と諦めるのではなく、多様な価値観に対応できる環境を整えることでも採用活動は円滑に進みます。

採用手法は自社に合っているか

採用手法はさまざまな種類がありますが、その中で自社に合った手法を選択できているでしょうか。

たとえば地方の中小企業で人材紹介エージェントを使っても、そもそも地方ではエージェントを利用しない求職者も多いので求める人材に出会えない可能性があります。大都市圏であればエージェントは有効ですが、地方の場合はハローワークや地元特化型の求人サイトなどを使う求職者も多いので、そうしたチャネルを利用するのも選択肢のひとつです。

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採用手法の種類|経理の採用に効果的な手法は?

ここからは、主な採用手法ごとに特徴やメリット・デメリットを紹介します。

ハローワーク

ハローワークは地域の求人が集まっているので、その地域で転職したい求職者をターゲットにする場合は効果的です。また無料で掲載できるため、採用コストをかけられない企業にも向いています。

ただし求職者の質については玉石混交なので、求めるスキルや経験のある人材が集まらない可能性があります。また求人情報の作成や精査、選考など採用活動の工程がフルで発生するため、採用担当者の負担が大きめです。

求人サイト

求人サイトに求人情報を掲載し、それを見た求職者からの応募に対応する手法です。地元特化型の求人サイトや、経理などのバックオフィス専門のサイトなど特化型のサイトを選べばターゲット層に効率よくアプローチできます。人材紹介エージェントに比べると求人掲載料金が低いのもメリットです。

求人サイトは中途採用では王道の手法であるがゆえに掲載企業が多く、知名度が低い企業は他社の求人に埋もれがちです。採用が決まるまで掲載料金がかかり続けることもネックです。

ダイレクトリクルーティングサービス

ダイレクトリクルーティングは従来型の「求職者からの応募を待つ」手法ではなく、「企業側から積極的にアプローチする」手法です。ダイレクトリクルーティングサービスに登録した求職者データベースの中から自社に合った経理人材を探し、スカウトメールを送るというのが基本的な仕組みです。

知名度が低い企業でも能動的にアプローチできる、「いいスカウトがあれば検討したい」と考える転職潜在層にもアプローチ可能といったメリットがあります。一方、候補者の見極めやスカウトメールの作成などに工夫が必要なので、採用担当者にノウハウが蓄積されていないと効果的に使いこなすことができません。

リファラル採用

自社の社員から知人を紹介してもらう手法です。自社のことを知り尽くした社員が、自社にマッチしそうだと思った人材を紹介してくれるので、マッチング率が高いのが特徴です。採用コストは紹介してくれた社員へのインセンティブが中心なので、ほかの手法と比べてコストを低く抑えられます。

ただし、リファラル採用はそもそも魅力的な会社でないと自社の社員が知人を紹介してくれません。また社員の協力が不可欠なのでリファラル採用の情報を社内に広く周知する必要があります。

人材紹介エージェント

エージェントに自社が求める人材像を伝え、エージェントに登録している求職者の中から自社に合った人材を探して紹介してもらう手法です。多様な職種を扱っている総合型エージェントと、特定の職種や業界に特化した特化型エージェントがあります。

企業側の希望をヒアリングしたうえで人材を紹介してくれるため、自社にマッチした求職者と出会いやすいのがメリットです。求職者とのやり取りを代行してくれるため採用工程を大幅に減らすことでき、採用担当者の負担が減ります。またエージェントの報酬は採用が決まった場合に発生する成功報酬型が基本なので、掲載し続けることのコストがかからず、費用対効果が高いのもメリットです。

一方、エージェントへの報酬は採用した人の年収に応じて決まるため一般に高額です。

経理の採用が難しいと感じているなら人材紹介エージェントがおすすめ

経理の採用に課題を抱えている企業におすすめなのは人材紹介エージェントです。単に人材を紹介してくれるだけでなく、自社の採用課題の洗い出しや求める人材像の整理、求人情報の作成など採用活動全体をサポートしてくれます。

ほかの手法では採用課題があっても自社で解決するしかありませんが、エージェントならば状況改善のアドバイスを受けることができます。経理の採用は難しいケースが多いため、エージェントに相談しながら進めるのがよいでしょう。

経理採用におすすめの人材紹介エージェント4選

最後に、経理の採用におすすめの人材紹介エージェントを4社紹介します。

BEET-AGENT

経理・財務、人事・労務など管理部門人材に特化したエージェントです。

BEET-AGENTは企業と求職者を同じアドバイザーが担当する「両手型」のエージェントなので、ミスマッチが少ないのが特徴です。企業と求職者双方の希望を丁寧にヒアリングしたうえで紹介を行っているため、マッチング率の高い採用を実現しています。

公式サイト:https://beet-agent.com/recruiting/

MS-Japan

管理部門と士業に特化した人材紹介エージェントです。業界特化型エージェントとして30年の実績がある老舗なので、採用支援のノウハウが蓄積されており、的確なサポートを受けられます。ハイスペック人材の採用に強みがあるので、優秀な経理人材や経理部門の管理職ポジションを求めている企業は利用をおすすめします。

※参考:MS-Japan

ジャスネットキャリア

経理・財務分野と公認会計士・税理士などの会計プロフェッショナルを専門としたエージェントです。業界の専門性が高いため経理ポジションを求める企業の課題を的確に把握し、最適な解決策を提案しています。経理や会計業界特化型として豊富なネットワークがあるため、優秀な経理人材に出会えるでしょう。

※参考:ジャスネットキャリア

リクルートエージェント

多様な業種・職種を扱う総合型のエージェントです。経理特化型ではありませんが、人材業界最大級の圧倒的な登録者がいるため、優秀な人材に出会える可能性が高いのが魅力です。担当のアドバイザーが企業の採用活動をもっとも効率的に進められるようサポートしています。

※参考:リクルートエージェント

まとめ

事務職の中でもとくに専門性の高い経理は、経験者が市場になかなか出てこないため、採用が簡単ではありません。求人情報の内容や採用活動、採用手法を見直し、自社に合った人材の獲得につなげましょう。

この記事の執筆者
キャリアアドバイザー
佐藤 えりな
管理部門特化の転職支援サービス『BEET』のキャリアアドバイザー。経理財務、人事労務、法務職の方の転職支援を強みをもっており。士業資格者の転職支援実績と、事業会社の両軸サポート実績多数。面談マン独度、求人マッチング精度に定評がある。