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管理部門の採用
更新日: 2023/05/19
公開日: 2023/05/19

採用に苦戦中の企業が講じるべき6つの対策と採用できない要因を解説

採用担当者として多数の時間を採用活動に費やしているにもかかわらず、なぜか採用がうまくいかずに悩んでいないでしょうか。または、採用難の時代だから応募がないのは仕方がないと、半ば諦め気味になっている担当者もいるかもしれません。

企業が採用に苦戦するのは社会情勢の変化などの外的要因と、採用活動そのものに存在する内的要因があります。外的要因については時代に合った対応が必要ですが、外的要因そのものを除去することはできません。そのため内的要因の中から改善点を見つけて対策を立てていくのが、人材を獲得するための近道です。

では具体的にどのような対策が必要なのでしょうか。この記事では、企業が採用に苦戦する要因を説明したうえで、具体的な6つの対策について解説します。

目次

企業が採用に苦戦する外的要因

企業が採用に苦戦するのには人口構造や社会情勢などの「外的要因」と、自社の採用活動に潜む「内的要因」の2つがあります。まずは採用に苦戦する外的要因について見ていきましょう。

少子高齢化にともない生産年齢人口が減少している

日本は少子高齢化にともない生産年齢人口(15歳~64歳)の人口が減少傾向にあります。労働マーケットはここ数年でますます縮小しており、企業の採用難が顕著になっています。

国際競争を勝ち抜く質の高い人材が必要

人口の減少により国内の経済市場は縮小傾向にあるため、海外へと商機を求めて企業のグローバル化が加速しています。しかし厳しい国際競争を勝ち抜くには質の高い人材が必要であり、それゆえに採用基準も上がっています。

働き方やキャリアが多様化している

働き方やキャリアが多様化していることも、企業の採用を難しくしている理由のひとつです。

テレワークやフレックス制、時短勤務や週休3日制などの柔軟な働き方ができる職場が増えています。求職者も転職に際してこうした職場を希望するようになっており、固定化された働き方しか提供できない企業は応募先から除外されてしまいます。

また転職は当たり前の時代となり、起業や副業・複業を含めてキャリアの多様化も進んでいます。働き手の選択肢が豊富なので、企業は自社で働くメリットを提供できないと選んでもらえません。

時代の不確実性

ビジネスを取り巻く環境は常に変化しています。AIなどの技術革新やSNSの普及、大規模な自然災害や新型コロナウイルスの流行など、ここ10年以内だけで見てもさまざまな変化や予期せぬ事象が起こりました。こうした不確実性の高い時代(VUCA時代)に求められる人材は環境の変化に対応できる柔軟性や創造力、能動的なマインドなどを持ち合せている必要があり、人材の見極めや採用基準の設定などが難しくなっています。

求職者の側も予測できない時代への不安感から企業への要求水準が上がっており、労働条件や労働環境のよい企業に人気が集まっています。すでに満足できる環境で働いている人は動かないので人材の流動性が低く、転職市場に優秀な人材が出回りません。

企業が採用に苦戦する内的要因

次に採用に苦戦する内的要因を確認しましょう。環境の変化などの外的要因は企業側の努力でそれ自体を変えることはできませんが、内的要因については対策を立てることで改善できます。

情報量が少ない・認知されていない

企業側が提供する情報量が少ないことは採用難を加速させる要因のひとつです。ここでいう情報とは求人情報だけでなく事業内容や強み、他社との違いなど、自社にまつわるあらゆる情報のことを指します。

情報量が少ないと、そもそも自社の存在を求職者に認知されていない可能性があります。存在は認知されていても求人を出していることを知らなければ転職先の候補にあがることもないでしょう。また、求人情報には触れていても情報量が少なく求職者が知りたい情報を得られなければ、応募を躊躇してしまいます。

自社や仕事内容の魅力を伝えきれていない

自社のことや仕事内容の魅力を伝えきれずに候補者を逃している場合があります。仕事内容の詳細を伝えるのはもちろん、その魅力をいかに伝えられるのかは非常に重要なポイントです。

ひと昔前には、大手企業に就職さえすれば一生安泰と言われるような時代がありました。しかし近年は大手企業の業績悪化や不祥事の発覚、早期退職者募集などが相次ぎ、大手だからといって安泰ではないことは明白です。若手を中心とした将来を担う人材も「会社に依存する時代ではない」と考えるようになり、会社規模や知名度などよりも仕事内容を重視する傾向が見られます

求める人物像がブレブレで適切な人材かを見極められない

企業としてどんな人材を求めているのかが明確になっていないと、応募があっても適切な人材かどうかを見極めることができません。採用担当者によって評価がわかれてしまうため、選考に時間がかかりすぎてしまい、人材の取りこぼしにもつながります。

また、求める人材像に合った採用方法の選定や的確なアプローチができないため、そもそも求める人材からの応募もこないでしょう。

選考フローや面接に問題がある

面接回数が多い・少ない、選考リードタイムが長すぎる、面接で自社の魅力を伝えきれていないなど選考フローや面接に問題がある場合も少なくありません。この場合、選考のプロセスごとに複数の課題を抱えているケースが多く、採用に苦戦している原因を把握しきれていない可能性があります。

対策①採用手法の見直し

ここまで紹介した採用に苦戦する理由を踏まえ、どのように改善していくべきについて、具体的な対策案を紹介します。まずは採用手法の見直しです。

採用手法ごとの特徴を理解する

現在の採用市場では、以下のように古典的な手法からトレンドの手法までさまざまな手法が存在します。

  • ハローワーク
  • 求人誌
  • リファラル採用
  • 転職フェア
  • 自社採用サイト
  • 求人サイト
  • 転職エージェント
  • ダイレクトリクルーティング
  • ソーシャルリクルーティング
  • ヘッドハンティング など

まずは、採用手法ごとの特徴を理解することが大切です。特徴を理解しないままに「費用がかからないから」「流行っているから」などと選定すると、応募がまったくこないなど募集の段階で躓いてしまうでしょう。「どの経路からであれば求める人材を獲得できそうか」を判断するには、採用手法の特徴を知る必要があります。

自社に合った採用手法を選定する

採用手法ごとにメリット・デメリットがあるため、どの手法であれば確実に採用できるということはありません。重要なのは、自社の採用課題や求める人材像に合った手法を選定することです。たとえば都市部では求人サイトや転職エージェントを使った転職活動方法が一般的ですが、地方ではハローワークや求人誌といった従来からある方法が主流の地域もあります。こうした場合に、求人サイトや転職エージェントに固執していても人材は獲得できません。

今の採用手法が自社に合っていないのなら、躊躇することなく変更しましょう。また、場合によっては変更するのではなく併用するほうが効果的なケースもあります。いずれにしても、その採用手法でどんな効果が出ているのかを測定しながら、最適な手法を選ぶことが大切です。

対策②情報発信を増やして認知度を上げる

求職者へ提供する情報量を増やすことも効果的な対策のひとつです。認知度を上げるための施策と充実した求人情報を提供するための施策があります。

そもそも認知されていないと応募につながらない

知名度の高い大企業や人気商品を扱っているような有名企業であれば、求職者に認知されている可能性が高く、求人を出せば応募が集まるかもしれません。もし自社がこうした企業に当てはまらないのなら、求職者が認知していない可能性も想定して認知度アップに努めましょう。そうしないと応募につながりません。

なお、日本にある企業は2021年6月時点で367万4,000社です。
※参考:総務省|令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計 結果の要約 概況

このような数の企業が存在する状況においては、「自社を知っているはずがない」という意識をもって認知度を上げる必要があります。

情報量が少ないと求職者は応募を躊躇する

自社の認知度を上げるための対策を講じたら、次は求人情報を充実させましょう。求職者は転職を失敗したくないと思っているため、できるだけ多くの情報を集めてから応募に臨みます。そうした中で情報量が少ないことは求職者にとって不安材料にしかならないため、せっかく興味を持ってもらっても応募につながらない可能性があります。勤務時間や給与などの最低限の情報だけでなく、仕事内容の詳細や求める人材像、残業や休暇の取得情報など求職者が知りたい情報を盛り込むようにしましょう。

複数のチャネルを使い情報発信を増やす

情報発信の方法はひとつに限定せず、複数のチャネルを使いましょう。求職者が情報収集にどんな媒体を使っているのか分からないため、できるだけ多くのチャネルで情報発信することが大切です。たとえば自社サイトや自社ブログ、SNS、採用イベントなどが挙げられます。

対策③ペルソナの設定

応募に際してはペルソナを設定することも重要です。ここでいうペルソナとは自社が採用したい人物像を詳細に定義したものをいいます。ペルソナを設定することで対象者に的確なアプローチができ、選考基準が担当者間で一致します。採用のプロセスに無駄がなくなるため、効率のよい採用活動を展開できます。

現場へのヒアリングが欠かせない

ペルソナを設定するためには、現場(募集部署)へのヒアリングが欠かせません。選考は採用チームが行うとしても、候補者が実際に働くことになるのは募集部署なので、募集部署でどんな人材を欲しているのかは確実に把握しておきたいところです。ヒアリングした後は、企業としてどんな人材を求めているのかもあわせて考え、ペルソナを設定しましょう。

求める人物像は言語化して共有する

ペルソナは言語化し、採用チームと募集部署で共有しましょう。そうすることで担当者ごとに評価の基準がブレることがなく、募集部署のニーズとかい離することもありません。

対策④採用条件の見直し

採用条件を見直すことで応募が一気に増える場合もあります。

条件が厳しすぎるといつになっても採用できない

まず、採用条件が厳しすぎないかを改めて確認してみましょう。優秀な人材にきてほしいとの思いから、いくつもの高い条件を設定する気持ちは理解できます。しかし条件のすべてを満たす人材が現れることは稀です。またそのような優秀な人材がいたとして、自社を選んでくれるのかといった問題があります。そのため採用条件が厳しすぎるままでは、いつになっても採用できず採用活動は長期化します。

譲れない条件と優先順位を設定する

採用条件は、譲れない条件(MUST)と、あればなおよい条件(WANT)のふたつに分けて考えます。この作業をしないと、応募者に求める条件の優先順位が定まらずにすべての条件でMUSTを要求してしまい、パーフェクトな人材でないと採用できないことになってしまいます。MUSTとWANTの分類は、スキルや経験のほかに人物特性やカルチャーフィットするかどうかなども含めて考えます。

対策⑤選考フローを見直す

選考フローの見直しも有効な対策のひとつです。選考フローの見直しは以下の点を重点的に行いましょう。

選考リードタイムを短縮させる

応募から選考が終わるまでの選考リードタイムが長いと、求職者が不安に感じ、選考途中での辞退につながってしまいます。選考はスピードが大事だと理解し、リードタイムを短縮させましょう。中途採用の場合、応募から内定を出すまでに2週間くらいに収めるのが一般的です。選考リードタイムを短縮するには、採用チームで情報を一元管理することが大切です。選考フローの一つひとつに時間をかけすぎずに済み、リードタイムを短くできます。

現場社員との面談も検討する

採用面接以外に、募集部署の社員との面談機会を設けることも対策になります。一緒に働くことになる社員から直接話を聞くことで入社後のイメージを抱きやすく、安心して入社してもらうことができます。選考途中での辞退を減らすためにも有効な対策です。面談以外では、職場見学を実施するのもよいでしょう。

内定後~入社後までを採用活動と位置づける

採用活動は内定を出して終わりではありません。内定後~入社後までを採用活動と位置づけ、最後までフォローしましょう。

内定後はメールや電話等で内定者と定期的に連絡を取ることが大切です。内定後は内定者が「本当にこの会社に入社してもよいのか?」と不安を抱きやすい時期です。いわゆる「内定ブルー」と呼ばれるもので、その状態を放置すると内定の辞退につながってしまいます。

入社直後も初めて実態を知ることで、事前に得ていた情報とのミスマッチが生じやすく、早期離職のリスクを抱えている時期です。また募集部署で中途入社者の受け入れ体制や雰囲気ができていないと、「歓迎されていない」と感じて辞めてしまう場合があります。入社後は定期的に面談の機会を設けて中途入社者の話を聞くなどしてフォローしましょう。

対策⑥採用担当者の意識改革とスキルアップ

最後に、採用担当者の意識改革とスキルアップが必要な場合があることもお伝えしておきます。採用環境がめまぐるしく変わる中で、採用担当者としての意識や仕事のやり方は常にブラッシュアップしておく必要があります。そうしないと時代に合わないやり方で採用を進めてしまい、人材を獲得できない場合があります。

企業は求職者から選ばれる立場だという意識づけ

採用難のこの時代、優秀な人材には多方面から声がかかるため、企業が待っていても人材は向こうから来てはくれません。求職者を選ぶという意識は捨て、求職者から選ばれる企業になるにはどうすればよいのかを考えましょう。

面接官の教育やトレーニングも必要

応募者の入社意欲は面接官の言動によって大きく左右されます。また昨今はSNSの発達などにより悪評はすぐに拡散されるため、面接官の言動が自社の社会的評価を大きく下げてしまうリスクがあります。

しかし、女性候補者に対して結婚や妊娠の予定を聞く、横柄な態度を取るなど言動が時代錯誤な面接官はいまだにいます。この場合、面接官の教育やトレーニングも必要になります。具体的な教育内容としては、面接官としての心構えや面接での質問内容・方法、面接官としてのNG行為に関する項目などがあります。

まとめ

企業が採用に苦戦する要因は、自社の採用活動の中に潜んでいることが多くあります。自社の採用活動は時代に合った方法なのか、選考の各プロセスに問題がないのかなどを今一度チェックしてみましょう。

この記事の執筆者
キャリアアドバイザー
佐藤 えりな
管理部門特化の転職支援サービス『BEET』のキャリアアドバイザー。経理財務、人事労務、法務職の方の転職支援を強みをもっており。士業資格者の転職支援実績と、事業会社の両軸サポート実績多数。面談マン独度、求人マッチング精度に定評がある。